路線選定に保険を(北陸新幹線2023考・肆)

保険をかけてみる

 さて、京都問題から見る北陸新幹線のルート選定をしたが、ここでもし様々な問題がこじれた場合の妄想案をここで示し記すことにする。
 というのも現在京都が抱えている問題である3つの要素

  1. 京都府南丹市美山町北地域に存在する「美山かやぶきの里・北村」を中心とした京都府南丹市美山地域のおける美観を損ねたり地下水が枯渇する自然破壊の懸念への反発
  2. 京都市内での大深度地下方式工法に対する建設費増大への反発
  3. 京都市伏見区などに代表される地下水の枯渇問題

これらを回避できる方法はルートの変更しかないと私自身は思っている。

 だからと言って福井県若狭地方は多くの原子力発電所を抱えており、その飴玉(?)として新幹線を小浜市に通すことを当時の総理大臣である田中角栄氏に約束を取り付けたとも聞いている。(検索すると出てくると思います。)
 ただ個人的見解として日本海国土軸を充実させ、スーパーメガリージョンのリダンダンシーとして機能するならば、たとえ飴玉がなかったとしても若狭湾と阪神地域をつなげることは必須と考えている。
 したがって前回の投稿にて個人的私案として1973年に国が定めた亀岡ルートに戻す案を提示した。しかしこの案は美山地区の懸念を払拭したわけでもなく、また松井山手にも新幹線を通せにくくなった。

 そこでこのルートに代替できる案があるのかを地図と睨めっこしたらあるルートを思いついたので妄想してみる。いわばルート選定の保険をかけてみる。

そもそもこの問題の根っこにいる滋賀県

 ここで現在ルートから外れている滋賀県の話をしてみたい。滋賀県はたびたび並行在来線やルート問題で話題になっている。と言うのも敦賀〜新大阪間が開通してしまうと湖西線が並行在来線になってしまうためだ。(断定したが多分ほぼほぼ決定的だろう)

 そのためか当事者の滋賀県でもいろいろ考えている。その思いなどが滋賀県のホームページに掲載されているのだが・・・・・・何だか一筋縄でいかない事情が見えてくる。
 その滋賀県のホームページを見た限りではあるが、その資料をもとに(参考・引用資料は最後に記述)滋賀県の本音を私なりに解釈をするとこういう解釈となった。

  • 北陸新幹線の東海道新幹線乗り入れは技術的に可能。しないのはJR東海とJR西日本の企業エゴでしかない!
  • 湖西線の第3セク移管は絶対許さない、許してたまるか!フリーゲージも絶対金など払わない!
  • 整備新幹線は国家プロジェクト。地方に対し必要以上に負担を強いるな!
  • かといって国家プロジェクトに滋賀県だけ駄々こねてもしょうがないので米原~敦賀間は3セク移管はまぁ許してやっか。これで手打ちにしようぜ!
  • 国家プロジェクトに駄々をこねるJR東海とJR西日本を説得するのは国の仕事だ
  • 大して受益の少ない北陸新幹線なんぞにお金は払わんぞ。
  • 以上を踏まえたなら許可はするが、やれるもんならやってみろ!

 正直ちょっと邪念しか思い浮かびませんでした(泣)
 ただこんな書き方をされたら私も思うところがありまして・・・

  • 国家プロジェックトと話したが滋賀県も日本国の構成員の一員であるはず。都合の良いところだけを差し出し、不都合なことは拒否をする姿勢は子供の駄々っ子のような印象を受け、それはどうかと思う。
  • 湖西線がそもそも大都市近郊区間かと言えば微妙な立ち位置。利用者数をもとにしたロジックを語るべき。
  • JR東海もJR西日本も国有鉄道や国営企業ではない。営利をある程度求めないでどうする!それとも営利負担支援基金を創設して差し出す気持ちがおありなのだろうか?
  • 湖西線存続のために経営権をJR西日本に存続させたいのならば湖西線基金を創設して支援するのはどうだろうか?
  • 歴史上交通結節点の米原を強調していたが(そもそも北国・北陸街道の分岐は米原ではなく鳥居本だがそれはまた別の話)米原自身開発のしようがない駅周辺。したがって消極的案と見受けられる。
  • その米原駅の交通結節点機能だが、そもそも東海道新幹線の停車は毎時ひかり1本こだま1本である。ハブとしてはしょぼくない?

という私の本音が漏れそうである・・・いやすでに漏れているか(笑)

 まぁ通貨発行権のある国とは違い地方は債権を発行して債務者になると債務をなかなか返せないのも実情だし、県民負担も下げたいのも心情としては理解しがたくはない。わからないわけでもない。

 そもそもこの滋賀県の問題は西九州新幹線における佐賀県の主張と同じだと見て良いのである。位置的では逆ではあるが、米原と新鳥栖は似た様な構造だし、近くには京都や福岡という都市もあるし、滋賀県にとっては大阪だって近い。あとここも大切だが、佐賀県は長崎県に用事が無いし、滋賀県は北陸3県に用事が無いのである。
 したがって滋賀県は佐賀県同様受益・メリットがないのだ。

 ただこのような経緯を踏まえた上で前段で申した通り路線案に保険をかけてみたい。京都・松井山手ルートや亀岡ルートで行かなくなった場合の次の一手を次回では妄想してみたい。つまり滋賀県がキャスティングボードに乗ることとなるだが・・・。

(この回の終わり・次回へ続く)


(参考・引用資料)

●滋賀県の本音

滋賀県・公共交通 広域鉄道・ネットワークより

北陸新幹線敦賀以西ルートに対する考え方(平成27(2015)年12月11日)

1.ルートの選定は国家的観点でデータを示し定量的に選定すべし。
2.現時点(2015年時点)での拠り所は関西広域連合の試算結果のみ。本県(滋賀県)はその結果として最も優れている「米原ルート」を推奨する。
3.データが示されていない「小浜・京都ルート」や「舞鶴ルート」への論評はできない。
4.国家全体の便益/費用を最適化できないルートは同調できない。
5.国家の便益を最大化するルートが仮に地域における利益と相反する場合、国が責任を持って対処すること。

滋賀県・公共交通 広域鉄道・ネットワークより 北陸新幹線敦賀以西ルートに対する考え方(平成27(2015)年12月11日)

北陸新幹線敦賀以西ルートに対する考え方(平成28(2016)年12月5日)

1.国において整備計画にある「小浜市附近」を経過しない「米原ルート」が調査され、最も投資効果が優れる等「米原ルート」の優位性が確認されたことへの評価。
2.本県の考え方に変わりはなく、開業までの期間が短く建設費が低廉で費用対効果に優れる「米原ルート」を推奨。
3.人口減少社会を迎えており「早く」「確実に」整備が必要。平成53年、2041年以降の開業では遅すぎる。他のルートと比較して財源的な優位性があり、前倒し整備に向けた力を生み出すルートを検討すべき。
4.北陸新幹線整備は重要な国家プロジェクトで多額の投資も必要。米原乗り入れなど、あらゆる可能性を検証し広く国民的な議論も踏まえルートを決定すべき。
5.国家全体の便益/費用を最適化できないルートには同意できない。国で最終的に決定したルートが仮に地域における利益と相反する場合、国が責任を持って対処すること。

滋賀県・公共交通 広域鉄道・ネットワークより 北陸新幹線敦賀以西ルートに対する考え方(平成28(2016)年12月5日)

北陸新幹線敦賀以西の3ルート案の試算結果 2017年10月10日

費用対便益(b/c)

  • 米原ルート     1.60(2.2)
  • 小浜京都ルート   0.54(1.1)
  • 小浜舞鶴京都ルート 0.18(0.6)

※( )内は国交相試算による

北陸新幹線敦賀以西の3ルート案の試算結果 2017年10月10日

本県の「北陸新幹線敦賀以西整備」に対する考え方 2018年1月15日

1.別途整備されるリニア中央新幹線の全線開業後の北陸新幹線のあるべき姿を踏まえ、敦賀以西の整備方針を国において早急に検討・決定すること。 なお、検討の前提になる敦賀以西の各ルートの費用便益調査について、早急に実施し、 公表すること。 
2.フリーゲージトレインの運行に伴い、生活ダイヤの利便性が将来にわたり低下しないようにすること。 
3.県民の間に、フリーゲージトレインの安全性、風・雪・騒音等に対する強い不安があることから、これらの課題について、国の責任において、しっかりと検証し、対策を講じること。 
4.フリーゲージトレインの運行区間については、第2回整備新幹線小委員会において、湖西線を運行する特急「サンダーバード」の振替との説明があったが、北陸と中京を結ぶ特急「しらさぎ」の敦賀駅での乗り換え利便性の低下を回避するための対策を講じること。 また、フリーゲージトレインの導入による新幹線ネットワークが効果的に機能されるよう、敦賀駅と湖北・湖東地域ならびに中京方面との良好なアクセス環境を確保すること。 
5.フリーゲージトレインの導入は、敦賀開業時の敦賀駅での乗り換え利便性の低下を回避 するためのものであり、その導入に必要な経費を本県に求めないこと。 
6.県内の停車駅の設定にあたっては、北陸3県と同水準の停車駅数および停車本数を確保 すること。 なお、具体の停車駅等については、事前に地元の意見を聞き、反映すること。

本県の「北陸新幹線敦賀以西整備」に対する考え方 2018年1月15日

北陸新幹線敦賀以西整備に伴う「並行在来線」に対する滋賀県の考え方 2018年1月15日

北陸新幹線敦賀以西のルートには、「並行在来線」は存在しない。理由は3つ。

1.これまで新幹線の通らない県で「並行在来線」として扱われた事例がないということ。
2.大都市近郊区間が「並行在来線」として取り扱われた事例がないということ。
3.これは福井県内の話だが、敦賀から小浜を通り舞鶴へ至る小浜線について物理的に新幹線と並行。しかし特急列車が運行されてないため新幹線整備に伴う旅客の影響がなく、JRにとっての過重な負担もって並行在来線・経営分離の対象にはならない。

北陸新幹線敦賀以西整備に伴う「並行在来線」に対する滋賀県の考え方 2018年1月15日

●メディア一般記事

なぜ滋賀県は北陸新幹線「米原ルート」に固執するのか?(2016年11月18日 6時30分公開)

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1611/18/news020.html

(資料終わり)

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